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展覧会に向けてー題名と釈文の書き方ー [【会員の方へ】]

東京書藝展の開催もあと二カ月余りとなりました。作品制作の進捗状況はいかがでしょうか。
 今回は出品の際の絶対不可欠な要件でありながら、意外と学習する機会の少ない「題名」のつけ方と「釈文」の書き方についてお話をしたいと思います。
 「題名」は読んで字のとおり、タイトルのことです。この題名のつけ方はかなり自由に考えてもよいでしょう。例えば五言絶句の漢詩を一つ書いたとしたら、作品名のみで①「李白詩」、その漢詩の題名をとって②「静夜思」、その両方を入れて③李白詩「静夜思」、またその書式が少し特殊であればそれを題名にかえて④「六曲二双屏風」(※六枚つづりの屏風が二つあるということ)というようにすることも可能です。この他にも自分の詠んだ歌なら⑤「自詠歌」とか「自詠歌一首」などとしたり、それこそ⑥「禅語」とか「漢字四字」とか「和歌」「和歌三首」「俳句」「俳句五句」「万葉集より」など、かなり幅を持たせる題名のつけ方もよく見られます。もちろん「一期一会」とか「寿」などと書いたのなら題名も⑦「一期一会」「寿」とするのは最もオーソドックスな方法でしょう。ただし題名が長過ぎるのもバランスがよくないので長い文章の場合などは、その書き出しの部分だけを書いて⑧「○○○○○……」としたり、その一部を書くのなら⑨「○○○○(作者名・題名など)の一節(より)」などとします。
 「題名」とはこのように自由につけてよいものです。「題名」のつけ方に悩んだら、その作品の言わんとしていることは何かについて考え、微調整を加えて表現してみるとよいでしょう。

 「釈文」とは、もともと仏教の経典などに書いている言葉を分かり易く平易な言葉で解説した文章のことを指します。書作品の解説文としての「釈文」は、作品の読みや意味を解説するだけではなく、例えば作品の文字が大きく崩してあったり変体仮名を使用している場合、その作品の文字自体を楷書体など読み易い文字で書直します。
 逆に誰でも読めるような常用漢字の楷書体で書いてあれば釈文にその文字を再び総て書く必要もないのですから、例えばその分、他の事を書いてもよいわけです。展覧会によっては手書きの釈文を掲示する場合もありますが、東京書藝展では会員の方が釈文用紙に手書きしたものを活字に打ち直して作品に添えます。作品に付する釈文は、作品を通して何を訴えかけるか、その表現の大きなスパイスとなります。なぜこの言葉を選んだのかを記してみたり、その言葉の意味内容に対して自分の意見を付したり作成にあたりどのような用具、用材を使ったのかを書いても、観覧者に興味を深化させる効果があります。
 ただ、あまり長すぎる釈文は逆効果です。作品鑑賞の妨げにならないよう、「ひといき」で読める程度に簡潔にまとめましょう。

 このように「題名」「釈文」の書き方一つで作品に趣きを加えられることも出来るわけです。作品製作の過程でぜひこれについても考えあわせながら筆を執るとよいでしょう。

(この記事は競書誌「実り」平成24年11月号より転載したものです)

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